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CDKL5フォーラムの報告

  • cdkl5japan
  • 6 日前
  • 読了時間: 18分

2025年10月27日~28日にボストンで開催された CDKL5フォーラム に、らぶはんずメンバー由芽ちゃんのパパが参加してくださいました。

さらに、lou lou財団のアナ・ミンゴランセ博士によるレポート内容を、みなさんに共有できるよう、丁寧に翻訳してくださいました。


日々お忙しい中、時間をつくって翻訳作業を進めてくださり、ありがとうございます。


▼レポートは内容はこちらから

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2025年CDKL5フォーラム報告(ボストン開催)


過去11年間、ルールー財団は毎年「CDKL5フォーラム」を開催してきました。この会議では、CDKL5欠損症(CDD)に関わる科学者や製薬企業、臨床医、そして患者団体の代表が集まり、最新の研究成果や治療の進展について議論しています。

( 過去のフォーラム(2018〜2024年)の概要も以前まとめました)


2025年のフォーラムは10月27〜28日、ボストンで開催され、来年2026年はロンドンで開催される予定です。今回のフォーラムはこれまでで最大規模となり、27社の企業22の患者団体を含む200名以上が参加しました。ここでは、今年のフォーラムでの主なポイントをまとめます(すべての発表を網羅しているわけではありません)。


1. CDKL5の新しい「有用な知識」の拡大

画像:左からダン・ラヴェリー博士(ルルー財団)、Enya Paschen博士(Ulysses Neuroscience)、Peter Kind教授(エディンバラ大学)
画像:左からダン・ラヴェリー博士(ルルー財団)、Enya Paschen博士(Ulysses Neuroscience)、Peter Kind教授(エディンバラ大学)

今回のフォーラムの前までは、CDKL5キナーゼの仕組みについてはほぼ解明されていると思っていました。しかし、それは間違いでした。今回のフォーラムでは、CDKL5がこれまで考えられていた以上に多様な機能を持つことが次々に明らかになりました。しかも、それらの多くは治療開発に直結する「有用な」知見です。


例えば、我々は、二つの国の研究グループが同時期に報告した発見について学びました。それは、CDKL5がRNA結合タンパク質(RNAを結合するタンパク質)を制御するというものでした。つまり、CDKL5が活性化されているとき、キナーゼとして他のタンパク質のオン・オフを調節するだけでなく、他のタンパク質がどれだけ合成されるか(発現量)がどの程度になるかをも制御するということです。さらに、CDKL5はオートファジー(細胞がタンパク質凝集体など不要な構成要素を除去する仕組み)にも関与していることが分かりました。これは、細胞内にどの程度の量のタンパク質が残るかを調節する別のメカニズムを提供します。また別の研究室は、CDKL5がシナプスに存在する複数のタンパク質を制御する理由を明らかにしました。それはCDKL5がシナプス蛋白に付着する“ベルクロのような”領域(PDZ結合ドメイン)を持っているためで、これによってシナプス蛋白群を直接的に取り扱えるのです。さらに、これまでに知られていた知見、たとえばCDKL5によるイオンチャネルCav2.3の制御や、微小管の挙動(ダイナミクス)およびその可塑性の調節といった点など、CDKL5の多面的な働きがより広く理解されてきています。


科学者たちにとっての意味:新しいターゲットの拡大と治療の可能性の拡がり

この発見が、私のように治療開発に携わる科学者にとって何を意味するかというと、新しいターゲットが増え続ける「拡張された地図」を手に入れたということです。つまり、私たちが試すことのできる新しい治療の方向性がさらに増えたということです。

 一見、複雑さが増えることは悪いことのように思えますが、実際には非常に良いニュースです。


また、Ulysses Neurosciences社からは、CDKL5欠損症(CDD)におけるマウス試験プラットフォームの発表もありました。そこでは、雄・雌両方のマウスでの行動指標や、発作およびEEG(脳波)の読み取りを含む包括的なテストシステムが紹介されました。これにより、今後のさまざまな治療法の評価が容易になると期待されています。


まとめ: 科学者たちは今もなお、CDKL5生物学の「ダークマター(未知の領域)」をマッピングしています。そして、それぞれの新しい発見がCDD治療法を開発するための重要な手がかりになっています。

 2025年フォーラムでは、この分野で非常に多くの新しい生物学的発見が報告され、極めて実り多い会議となりました。


2. これまでにないほど多くの新薬へアクセスする機会

CDD治療薬の開発パイプライン一覧、司会オーリン・デヴィンスキー教授(NYUランゴーン医療センター)、Angel Neurotherapeutics社のプログラム、UCBファーマによるフェンフルラミン(Fenfluramine)のデータ、Lundbeck社のBexicaserin治験サイト、Praxis社CSOスティーブ・ペトロウ教授。
CDD治療薬の開発パイプライン一覧、司会オーリン・デヴィンスキー教授(NYUランゴーン医療センター)、Angel Neurotherapeutics社のプログラム、UCBファーマによるフェンフルラミン(Fenfluramine)のデータ、Lundbeck社のBexicaserin治験サイト、Praxis社CSOスティーブ・ペトロウ教授。

ルールー財団のダン・ラヴェリー博士の冒頭発表では、CDDの治療薬パイプラインのスライドが示され、複数世代の低分子薬および遺伝子治療薬がすでに臨床試験中、または試験準備段階にあることが示されました。


そして最も重要なのは、2025年には1つの薬が承認済みで、2つ目の薬が第3相試験を成功裏に完了し、さらに2つのグローバル第3相試験がCDD患者を対象に進行中という点です。これほど進展した年は、これまで一度もありませんでした。


今年のフォーラムには、Marinus社を買収したImmedica社が初参加しました。Immedicaチームは、副作用を減らすためにガナキソロン(ganaxolone)の投与量をゆっくり増やす(スロータイトレーション)**方法について発表しました。ガナキソロンはすでに米国で商業化されており、Immedicaは他国での市場アクセスに向けて取り組んでいます。


この夏、UCBファーマはCDDを対象としたフェンフルラミン(fenfluramine)の第3相試験が良好な結果を示したと発表しました。フォーラムでは、フェンフルラミンの複雑な作用機序(セロトニン受容体5HT2Cにとどまらない多面的な作用)についても紹介されました。

 この試験結果の詳細は12月の米国てんかん学会(AES)で発表される予定であり、UCBはフェンフルラミンの適応症にCDDの発作治療を追加する承認申請を行う予定です。

昨年以降、規制当局は複数のてんかん症候群をまとめて臨床試験に組み込むことを許可し始めました。これにより、CDDにおける新しい治験の機会が生まれています。これらの試験では、月に4回以上のカウント可能な発作があれば対象となり、小児から成人まで参加できます。


現在、世界中で2つの大規模な第3相試験が進行中です:


 ● Lundbeck社は、DEEp OCEAN試験を実施中です。 この薬剤「ベキサセリン(bexicaserin)」はフェンフルラミンの受容体の1つである5HT2C受容体を利用し、第2相試験でも非常に良い効果を示しました。 試験は米国、オーストラリア、ヨーロッパ、アジアなど約100か所のサイトで行われています。


 ● Praxis社は、EMERALD試験を実施中です。 この薬「リルートリギン(relutrigine)」は次世代型ナトリウムチャネル遮断薬で、調整不要(no titration)、1日1回の投与、液体製剤で、在宅治験(医師と看護師が自宅に訪問)が可能という利点があります。 試験は世界中で実施中で、公式サイトは12か国語に対応しています。


さらに、発作頻度を減らすためのこの「第一世代の治療」に続き、数年後に登場が期待される精密医療(precision medicine)の開発も紹介されました。 Angel Neurotherapeutics社のマッシミリアーノ・ビアンキ博士は、PMEという薬とその類縁化合物の前臨床研究を発表しました。これらの薬は細胞骨格結合タンパク質に結合してCDKL5の喪失を補うもので、最も進んだ薬は2027年にCDDを対象とした臨床試験開始を目指しています。

 このような精密医療薬は、CDD生物学の根本的な異常を補正することを目的としており、非発作症状の改善も期待されています。


まとめ: 現在、CDDの家族はこれまでになく多くの新しい実験的治療へのアクセスを得ています。しかも、これまで試験対象外だった成人患者も参加可能になっています。


3. 遺伝子治療の進捗と安全性からの学び

左上からキーノートスピーカー兼モデレーター:ジム・ウィルソン教授(Gemma Bio) Elaaj gene therapy program(ルールー財団) ラス・アディス博士(ルールー財団)カイル・フィンク博士(UC Davis) UC Davis の X reactivation プロジェクトアンドリュー・スタインサピア(Apertura Gene Therapy)
左上からキーノートスピーカー兼モデレーター:ジム・ウィルソン教授(Gemma Bio) Elaaj gene therapy program(ルールー財団) ラス・アディス博士(ルールー財団)カイル・フィンク博士(UC Davis) UC Davis の X reactivation プロジェクトアンドリュー・スタインサピア(Apertura Gene Therapy)

遺伝子治療は今回の CDKL5 Forum でも大きなテーマであり、今年は「期待」と「慎重さ」の両方のメッセージを受け取りました。ある Alliance のメンバーは「今回は本音の話が聞けた感じがした」と言い、それによって CDD の遺伝子治療がこれまで以上に現実味のあるものに感じられたと話していました。


今回、開発中の3つの遺伝子治療について学びました。


1. Ultragenyx の遺伝子治療プログラム

Ultragenyx の Dr Sharyl Fyffe-Maricich は、まず「象のように大きな問題」、つまり現時点では臨床試験に進む時期について明確なタイムラインを提示できないことに触れました。


しかし、彼女は私たちに非常に大きな科学的成果を共有してくれました。


サルの研究で、すでに CDKL5 を作っているニューロンにも、遺伝子治療によって追加の CDKL5 を作る余地があることが分かったのです。


これは ミスセンス変異(CDKL5は作られるがアミノ酸が1つ間違っていて機能しないタイプ)の CDD 患者にとって特に重要です。 Sharyl の研究では、遺伝子治療後は


 ●変異した遺伝子から作られる CDKL5

 ●遺伝子治療から作られる CDKL5


が両方混ざる形になる見込みで、これは非常にポジティブな結果です。私もこのデータを聞いて大変安心し、感謝の気持ちでいっぱいでした。


2. ルールー財団 の遺伝子治療プログラム

ルールー財団 の ラス・アディス博士 は、財団が進めている遺伝子治療の進捗を発表しました。


この遺伝子治療は ジム・ウィルソン教授 との共同開発で、AAV9 に非常に似たウイルスを利用しており、すでに4つの臨床試験で使用されています。ウイルスの内部には CDKL5 遺伝子のコピーが入っていて、脳脊髄液(CSF)への注入で投与します。


ラス・アディス博士  は以下の進捗を共有しました。


 ●CDD マウスでの 最適用量を決める試験が完了

 ●サルでの 毒性試験もすでに終了

 ●現在は 製造プロセス(大量生産)を開始

 ●臨床試験デザインも進行中


製造には「1年近くかかる」とのことで、2026年末ごろに臨床試験申請、2027年に試験開始を目指す見通しです。


また、ルールー財団 は ジム・ウィルソン教授 の会社である Gemma Bio とデータ共有のパートナーシップを発表。さらに、今後複数の遺伝子治療オプションを作り、アクセスを増やすため、Elaaj Bio という子会社も設立しました。


ラス・アディス博士 の言葉を借りると、Elaaj Bio のビジョンは 

「家族と患者が1つではなく複数の選択肢を持つこと」

です。


3. UC Davis の X 再活性化遺伝子治療

UC Davis の カイル・フィンク博士 の研究室は、非常に革新的な X再活性化 (X reactivation) 遺伝子治療を開発しています。


これは、CRISPR を使った「指示書」をウイルスでニューロンに届けて、女の子が持つ 2本目の X 染色体上の正常な CDKL5 遺伝子を「読み込ませる」方法です。


カイル・フィンク博士 は以下の進捗を報告しました。


 ●CDD マウスでの高い効果を再確認

 ●人の神経細胞(患者由来オルガノイド)でも機能することを確認 

 ●適切な投与量の決定

 ●製造に着手しており、まもなくサルでの毒性試験を開始


現在のバージョンは 2種類のウイルスを CSF に投与しますが、UC Davis の Julian Halmai が、1つのウイルスでできる小型 CRISPR の開発を進めており、将来はさらに投与が簡便になる可能性があります。


中止された遺伝子治療プログラム

驚きのニュースとして、Biogen の Ashton Brennecke が、Biogen が秘密裏に進めていた CDD の遺伝子治療を中止したことを報告しました。


Biogen の治療は Ultragenyx や ルールー財団 のアプローチに似ていて、マウスの EEG(脳波)を有効性の指標に使うための最適化研究を行っていたとのことです。


非常に興味深い内容でしたが、一方で Biogen が Amicus や PTC Therapeutics と同じく、試験開始前に撤退した企業の一つになったのは残念です。ただし、こういった撤退は治療開発の世界ではよくあることで、「ゴールに届くには複数の試み(shots on goal)が必要」である理由でもあります。


1990年代の最初の遺伝子治療から、この分野が学んできたこと

ジム・ウィルソン教授(Gemma Bio CEO、UPenn Orphan Disease Center 元所長)は、遺伝子治療の歴史と学びについて素晴らしい講演を行いました。


ジム・ウィルソン教授 は以下の重要ポイントを語りました。


 ●遺伝子治療は初期から 免疫との戦いである

 ●AAV9 を発見し、多数の臨床試験を進めてきた

 ●高用量の静脈投与による 最近の患者死亡例について業界が透明性を持つ必要がある

 ●約500匹のサルを使った毒性研究で得た知見を共有

 ●企業が死亡例を隠さず公開することで 事前に安全性試験を改善できる


Apertura Gene Therapy の アンドリュー・スタインサピア 氏は、神経疾患向けに開発しているカプシド(ウイルス)について説明しました。このウイルスは静脈内投与(intravenous administration)によって体内に届けられる設計になっています。ウイルスは、脳の血管系に存在する受容体に結合することで、血液から脳へ移行できるようにエンジニアリングされています。


同じ受容体を使って血液から脳へ移行する治療法として、ウイルスではないものの、これまでに大きなタンパク質を用いた治療の例が存在します。そのため、Apertura のチームは、自分たちの最初のプログラムが臨床試験に進んだ際に予期しない問題が起こる可能性は低いと考えています。


もし臨床試験で安全性が確認されれば、このタイプのウイルスは CDD 向け第二世代の遺伝子治療として利用できる可能性があります。つまり、これまでのように脳脊髄液(CSF)に外科的に投与する必要がなく、静脈注射だけで治療が完了する遺伝子治療が実現するかもしれないということです。


さらに、Attentive Science の毒性学者 バセル・アサフ博士 は次の点を強調しました。


 ●サルモデルはこれまでよく毒性を予測してきた

 ●だが最近、ある希少疾患の静脈投与遺伝子治療でサルでは予測できなかった死亡例があった

 ●「高用量とは何か」を分かりやすく説明 静脈投与の遺伝子治療では 7000兆(7 quadrillion) ものウイルスを使うこともある これは人間の体細胞数より多い数です


Ultragenyx、ルールー財団、UC Davis の3つの遺伝子治療は、いずれも高用量の静脈投与ではありません。少量のウイルスを用い、CSF に直接投与する方法です。


まとめ

遺伝子治療分野は、安全性リスクについて学び続けており、それには透明性と協力が不可欠です。


CDD の遺伝子治療については、

 複数の方法が存在しており、2027年には最初の臨床試験が始まる可能性があります。


このセッション全体を通じて、私は非常に前向きな印象を受けました。


ある CDD のお父さんが SNS に書いていたように、 

「本当の変化が始まっている」

という言葉がぴったりだと思います。


4. 私たちは複雑な臨床試験を実施できる段階に近づいている

パネルディスカッション「CDDの臨床アウトカム指標は現在どこまで来ているのか。」
パネルディスカッション「CDDの臨床アウトカム指標は現在どこまで来ているのか。」

登壇者:

ザビエル・リオジエ博士(ルールー財団)、

バリー・ティコ博士(Stoke Therapeutics)、

ヘザー・オルソン博士(BCH)、

ジェニー・ダウンズ博士(Kids Research Institute, パース)。

画像には写っていないが、ティム・ベンケ教授(コロラド大学)、

ビリー・ダン博士(ルールー財団、元FDA)はパネルに参加。


過去5年ほど、私たちは「発作以外の症状」を測定するための臨床アウトカム指標(臨床試験で使う評価スケール)の開発と妥当性確認について話を聞いてきました。

 2025年フォーラムの発表を見る限り、作業の80%ほどはすでに完了しており、もし「明日からCDKL5の遺伝子治療の臨床試験を始める」となっても、どの評価指標を使うべきかは明確になってきています。


ルールー財団 のザビエル・リオジエ博士は、国際共同研究 CANDID の最新アップデートを紹介しました。

 この研究では、他の疾患で認知、行動、運動機能を測るために使われ、規制当局(FDAなど)にも承認されているスケールを、CDD向けに検証しています。

 今年12月までに、CANDID は 100人のCDD患者を2年間追跡 し、各尺度で 2年間にどれほど変化が起こるのかという縦断データ を示します。 複数のスケールやサブスケールがCDDに適していることがわかっており、論文も査読中です。


CANDID から得られた重要な学びのひとつは、CDDの患者は1日に1から5回の発作があるため、ほとんどの患者が現在の発作を対象とする臨床試験の基準を満たす という点です。

 これは他のてんかん症候群よりも多い数字です。


コロラド大学のティム・ベンケ教授、そしてパースの Kids Research Institute のジェニー・ダウンズ博士は、CDDのために特別に設計された新しい臨床スケール の開発について発表しました。

 ティムが主導する観察研究も、約100名が2年フォローアップに近づいており、EEG(脳波) も含まれているため、遺伝子治療が脳内で何を起こしているのかを示す バイオマーカー候補 になる可能性があります。

一方、ジェニーは CDDのコミュニケーション能力を測定する新規スケール を開発中で、これは多くの家族にとって最優先のテーマです。

 彼女の技術的に非常に丁寧で難しい作業は、元FDAディレクターから強く称賛されました。


その後のパネルディスカッションでは、元FDAディレクターのビリー・ダン博士や、Stoke Therapeutics のCMO バリー・ティコ博士らが一つ重要な点を強調しました。


臨床試験と患者ケアは目的が異なる。

患者ケアは疾患全体の複雑さを個々の患者のニーズに合わせて見る必要がありますが、 「製薬会社は薬を承認するための臨床試験では、あらゆる項目を全部示す必要はない」 ということです。


ビリー・ダン博士は「意図せぬ障害を作り出さないように」と警告し、 「すべてを試験に入れ、すべてをラベル(添付文書)に書く必要はない」と述べました。

 そして、承認後の追加研究で薬の潜在性をより広く理解し、承認後は 医師が個々の患者に合わせて価値を見つける のが望ましいと提案しました。


まとめ:発作以外の領域で、CDDの臨床試験に使える評価スケールの開発と検証が大きく進んでいます。この数年間の取り組みのおかげで、もし明日にでも遺伝子治療の臨床試験を始める必要があったとしても、どのアウトカム指標を使うべきか、すでに私たちはよく分かっている状態 と言えます。


これは、直接的な利益がないにもかかわらず、2年間(あるいはそれ以上)観察研究に参加してきた数百人のCDDファミリー の努力によって実現しました。

 皆さんはこの進歩を生み出した、本当に誇るべき存在です。


5. 力強い国際コミュニティと希望のための世界的な連携

上からリリ・ハス(CURE5)のメッセージと写真、 Dr. マリア・ルイーザ・トゥティーノとリン&マジッド・ジャファーの写真、 Dr. キャサリン・フレイムの発表と写真(CDKL5 アライアンス)
上からリリ・ハス(CURE5)のメッセージと写真、 Dr. マリア・ルイーザ・トゥティーノとリン&マジッド・ジャファーの写真、 Dr. キャサリン・フレイムの発表と写真(CDKL5 アライアンス)

国際コミュニティ、とくに CDKL5 患者アライアンスは、データや分子ではなく人々を中心に団結した「希望のグローバルアライアンス」と繰り返し表現されました。


患者団体だけでなく、科学者、臨床医、企業、患者擁護者の協力が、分子レベルの理解から CDD の治療へと進むスピードを加速させていると評価されました。

 この協力関係を象徴するものとして、UCB Pharma が「違いを生む企業」として、UC デービスの Dr. カイル・フィンクが「ラボ・オブ・ザ・イヤー」として、Dr. マッシミリアーノ・ビアンキが「チャンピオン・オブ・プログレス」として表彰され、さらに複数のジュニアフェローシップ賞も授与されました。


フォーラムは患者の声から始まり、マーゴの母で CURE5 の共同創設者であるリリ・ハスが、自身の家族のストーリーと「発作はただのサイドディッシュで、発達の課題こそがメインコースです」と語りました。彼女は科学者たちに、より大きな治療効果を求めるだけでなく、機器、摂食のイノベーション、在宅でのデータ追跡の改善など、家族の生活を楽にするツールにも目を向けてほしいと訴えました。


エレットラの母でありタンパク質科学者でもある Dr. マリア・ルイーザ・トゥティーノは、ガラディナーで講演し、科学とは実験だけでなく、人、つながり、そして粘り強さであると説明しました。

FAST エンジェルマン財団のアリソン・ベレントも、同じく希少疾患の母であり科学者として、緊急性と粘り強さの必要性を強調しました。


そしてキエラの母である Dr. キャサリン・フレイムは最後のプレゼンテーションを行い、CDKL5 アライアンスの議長として「団結した希望の世界」について語り、世界中の多くの CDD 患者団体が行っている活動を強調しました。キャサリンは、「団結した希望とは、強さ、決意、回復力、思いやり、そしてつながりを意味する」と説明しました。


アリアの父でありルールー財団の共同創設者であるマジッド・ジャファーは、CDKL5 アライアンスの成長こそがこの協力関係の強さの大きな要因であると述べ、会議を締めくくりました。彼はこれまでのフォーラムと同様に、私たちは思っていた以上に遠くへ、そして速く進んできたが、家族が望むほど遠くへも速くも進んではいないと振り返りました。]

 マジッドは参加者に対し CDD の治療法開発への献身を新たにするよう呼びかけ、1 年後の 2026 年、英国ロンドンでの CDKL5 フォーラムで再会するよう招待しました。


そしてこれが 2025 年 CDKL5 フォーラムのまとめです。 

そこで私たちは、治療の新しい扉を開く思いがけない CDKL5 生物学を学び、これまで以上に多くの家族が臨床試験に適格となり、CDD の遺伝子治療の進展がこれまでになく手触りのある現実的なものに感じられました。

すばらしいフォーラムでした。


このサマリーを楽しんでいただけたならうれしいです。ロンドンでお会いしましょう。


著者:アナ・ミンゴランセ博士(ルールー財団)

アナ博士の原文レポートはこちら


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今回のフォーラムを通して、海外では数多くの研究が進んでおり、研究者や製薬会社をはじめ、多くの専門家がCDDの治療に向けて真摯に取り組んでくださっていることを改めて知ることができ、大きな励ましを受けました。


世界の研究者の方々が、希望につながる一歩を重ね続けてくださっていることは、私たち家族にとって心強い励ましとなっています。


レポートには専門的な内容も多く含まれていますが、ぜひ目を通していただき、ご家族や周囲の方々にも広く共有していただけますと嬉しく思います。


また、由芽ちゃんパパによるフォーラム参加の感想も、後日あらためて掲載いたしますので、どうぞ楽しみにお待ちください。このたびの翻訳協力に、あらためて心より御礼申し上げます。

 
 

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